#17 実例から学ぶ!遺伝子検査における落とし穴
こんにちは、グリスタの斎藤です。
ジムや治療院、健康からスポーツ、美容まで様々なジャンルのヘルスケア事業が存在しています。近年はそういった事業者が、提供する運動やケアなどの指導で遺伝子検査を取り入れる機会が増えてきています。
しかし、一部の事業者において、リスキーな事業形態をとっていたり、事業者側が意図せずユーザー利益にならないサービスを提供しているケースが非常に目立ちます。
今回はそういったケースを紹介したいと思いますので、思い当たる方やこれからそういった事業に取り組む予定の方は少し立ち止まってみてください。
ユーザー利益にならないサービス提供の要因は、大きく分けて2つあります。
1:簡単に取り入れてしまっている
2:本来の用途で使われていない
ほとんどの事業者の場合、この両方が当てはまっています。
実例を元に説明してみたいと思います。
遺伝子検査を扱うには、情報の質や表現内容、検査体制や運用体制という検査に関わる事だけに限らず、法律面や倫理面など多岐に渡って配慮するポイントが存在します。
ジムや治療院の店舗で遺伝子検査を扱っています、というケースでは、上記した配慮すべきポイントを見落としたまま仕入れて販売したり、、「売り」として標ぼうしています。
遺伝子検査を既に扱っている治療院経営者の方とお話した際、情報の質や検査体制など上記したことは一切把握されていないまま取り扱いを行っていました。少し聞いただけでも法的にも倫理的にも情報の表記にも問題があり、聞いているこちらが怖くなってしまうほどでした。
それをお伝えしてもあまりピンと来ていないようでしたが、お店の理念としては「お客様により良い施術で健康を提供したい」だったので、理念に反する状態になっているため遺伝子検査はそのまま使わない方が良いことをお伝えしました。
この店舗の場合、取り扱っている遺伝子検査キットは本来通販などでエンドユーザーに直接小売りする目的で作られているものでした。以前も何度か紹介しましたが、DTC遺伝子検査キットはほとんどが有用性に関する科学的根拠の欠如が指摘されています。
引用元:経済産業省
この引用元では科学的根拠の質以外にも、検査結果の表現に誇張や事実誤認を与えるようなものが多く存在することや、匿名化や情報管理、検査体制など運用体制が十分でない事業者が多く、課題になっていることが指摘されています。
上記した治療院さんでは、お聞きしているとまさにこの指摘事項のほとんどに該当するような遺伝子検査キットを採用されていました。採用する前にメーカーに確認しておけば回避出来たことですが、深く考えず簡単に採用してしまったのが問題でした。
要因の1つ目「1:簡単に取り入れてしまっている」というのが該当します。
遺伝子検査結果の表記方法や解釈も、経産省や医師会が指摘しているものの中でも特に、今や代表格として有名になっている「肥満遺伝子(※)」を中心として構成されている遺伝子キットで、それを元にダイエット指導を行うという内容でした。
既に数千人規模の調査・研究により科学的根拠の質が否定されている検査情報を用いて指導したところで、正しいサービスを提供することは出来ません。残念ながらそういった意味で、理念に合っていないとお伝えした次第です。
※糖質・脂質・タンパク質に言及し、リンゴ・洋ナシ・バナナ型のように肥満のタイプが分かる、それによるダイエット方法が分かる、とされている遺伝子検査
このダイエット指導の例はまさに「2:本来の用途で使われていない」に該当する内容です。
遺伝子検査はダイエット方法を調べているわけではなく、酵素の働きやホルモンの働きなど、体にとって基礎的な働き・影響を調べるものです。遺伝子検査で才能や適性など調べられないのと同じで、検査結果から方法を決めてしまうのは本来の用途ではありません。
経産省の引用元にも、遺伝子検査からサプリメント等の二次販売につなげているビジネスモデルが言及されていますが、まさにこの事例に該当します。
上記した2つのケースは、ほとんどの場合で事業として上手く行きません。
その結果、遺伝子検査は扱っても上手くいかない、難しい、売れない、などという事になってしまうのです。
今回紹介した2つを回避して事業に取り入れるには、堅実な体制とサービスの構築が求められます。そうすることによって差別化が構築されるのですが、安易に手を出してしまうとむしろお金も時間も中途半端に失うことになります。
(そもそ簡単に出来るものは他社も簡単に出来るので「差別化」にならないんですが・・・)
自社の事業に遺伝子検査を取り入れたい場合は、今回紹介したようなことを意識して無駄なコストや時間を使わないように注意しましょう。
本日は以上です!
最後までお読み頂きありがとうございました。
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株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利
1979年生まれ/和歌山県出身/工学修士学生時代は竜巻のメカニズムを研究。2010年バレーボール個人指導スクール設立をきっかけに、個人の体質によるパフォーマンス影響に着目。2015年より遺伝子業界へ。2018年、日本で初めて専門事業者の指導やヘルスケアソリューションを個別化することに特化した業務用遺伝子分析サービス「IDENSIL」を開発・リリース。内閣官房が進めるレジリエンスジャパン推進協議会のWG委員選出や自治体との連携、日本を代表するトップアスリートの指導者への遺伝子情報提供を通じ、ヘルスケアから美容まで幅広い個別化に携わっている。