株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利

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#16 遺伝子検査を上手く使える事業者と失敗する事業者の決定的な違い

 

こんにちは、グリスタの斎藤です。

今回は近年見かけることが増えてきた、ヘルスケア事業者が遺伝子検査キットを扱うケースについて、上手く行く・失敗するケースの違いについて、一番大きなポイントをお伝えしたいと思います。

遺伝子検査キットをヘルスケア事業者の方が扱う場合、大きく以下の2つの取り扱い方があります。

A:遺伝子検査キットをユーザーに小売(DTC※)販売する
B:遺伝子検査キットを用いてお客様の体質情報を知り、個別化されたサービスを提供する

(※DTC・・・Direct to Consumer の略)

結論から言うと「A:遺伝子キットをユーザーに小売販売する」という扱い方で、
少なくとも私自身は上手く行っている事業者を見たことがありません。
上手く活用出来ている事業者は全て「B:遺伝子検査キットを用いてお客様の体質情報を知り、個別化されたサービスを提供する」ことを行っているケースです。

したがって掲題の結論とすると、このAとBが決定的な違い、ということになります。
しかし、Bのパターンでも上手く使えていないケースが実在します。

2つの事例を元に、

A➡DTC
B➡個別化

と省略し、この後それぞれの違いについて説明していきます。

 

【1:他社との差別化】

 

ヘルスケア事業者が遺伝子情報を扱うという前提ですので、ここでは当然「ヘルスケア事業者にとって、遺伝子情報を扱うことが他社と差別化になるかどうか」ということを意味しています。
例えばパーソナルジムのような運動・トレーニングを提供しているヘルスケア事業者が遺伝子情報を扱うケースで比較してみます。

A(DTC):遺伝子キットを店頭でDTC販売しているジム
B(個別化):遺伝子情報によりお客様の体質に合わせて個別化したトレーニング指導を提供するジム

A(DTC)とB(個別化)のケースではこのような違いになります。
見て分かるように、Aは他人の(他の事業者が作った)商品を店頭販売しているに過ぎません。これは遺伝子キットを販売してレポートをお渡しする、という一連の商品であることが多いですが、価値は「遺伝子キット」に存在しています。

そのため、本来お客様に提供している価値はトレーニング指導を提供することによる「ボディメイクやダイエット」であるにも関わらず、その価値提供と遺伝子キットの販売が関わっていません。

一方でB(個別化)のパターンは、本来の提供価値であるトレーニング指導(によるボディメイクやダイエット)に対し、「お客様に個別・最適化されたサービスを提供」出来るというハイスペック化された強みや価値へと生かされているのが特徴です。

この違いは上述したように、お店に来ているお客様にとって価値があるかどうか、もっと言うと「ジムの特徴」として魅力的に見えるようになっているかどうかがポイントです。
ジムを探す、通う、ということをしているユーザーが求めていることは、トレーニング指導による身体の変化です。決して遺伝子検査を求めているわけではありません。

 

【2:検査から得られる情報の違い】

 

DTC遺伝子検査キットについては、以前もお伝えしたように経済産業省や日本医師会で様々な懸念や指摘がなされています。

引用元:経済産業省「消費者向け(DTC)遺伝子ビジネスのあり方に関する研究会」

【参考】https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dtc/index.html

A(DTC)のパターンのようにお客様に遺伝子キットを販売しようとする場合、DTC遺伝子検査キットを仕入れて販売する必要があります。遺伝子検査キットには「規約」が同梱されており、通常はそこに検査結果データの取り扱いについて明記されています。(明記されていないケースも多いようですが、その場合は店舗側でリスクが発生するので注意が必要)

DTC遺伝子検査キットは上記にリンクした研究会では「ほとんどは科学的根拠の有用性に乏しい」という指摘がされています。

これは検査自体が悪いわけではなく、検査から得られる「解釈」やその「表記・説明」に事実誤認を与える表現や誇大解釈、あるいは都合の良い解釈で販売されているなどといったことが指摘されています。

A(DTC)ではそういった指摘されているものを、ヘルスケア専門事業者という立場で販売してしまっていることがそもそも問題になります。

一方でB(個別化)の場合でヘルスケア事業者がA(DTC)の遺伝子検査キットを個別化のために活用していたとしたらどうなるでしょうか。エンドユーザーに事実誤認を与える「解釈」や「表記」がされたレポートを参考に、トレーニング指導を行うことになります。
これでは個別・最適化された指導を元に成果を出すことは出来ません。

このようにDTC販売することは、差別化にならないだけでなく、ヘルスケア事業者側はリスクを背負って販売していることになりますし、個別化を目的に活用する場合も、問題視されているような検査キットを参考にしてしまっては元も子もありません。

上手く活用するためには、
個別化させるために活用するだけでなく、検査キットの用途や品質までしっかり見極めてから取り組む必要があります。

 


本日は以上です!
最後までお読み頂きありがとうございました。

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株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利

株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利

1979年生まれ/和歌山県出身/工学修士学生時代は竜巻のメカニズムを研究。2010年バレーボール個人指導スクール設立をきっかけに、個人の体質によるパフォーマンス影響に着目。2015年より遺伝子業界へ。2018年、日本で初めて専門事業者の指導やヘルスケアソリューションを個別化することに特化した業務用遺伝子分析サービス「IDENSIL」を開発・リリース。内閣官房が進めるレジリエンスジャパン推進協議会のWG委員選出や自治体との連携、日本を代表するトップアスリートの指導者への遺伝子情報提供を通じ、ヘルスケアから美容まで幅広い個別化に携わっている。

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