#93 「専門家だから選ばれる」は本当か?―エンドユーザー視点で考える信頼の正体
【この記事の3行まとめ】
・エンドユーザーは“専門性そのもの”を評価しているわけではない
・選ばれる理由は、知識量ではなく「一貫した設計」にある
・データや体質情報も、解釈と設計があって初めて価値になる
皆さんこんにちは。
株式会社グリスタ 管理栄養士の根岸です。
今回は、「エンドユーザー視点で考える信頼の正体」をテーマにお送りします。
ヘルスケア業界では、
「専門家だから信頼される」
「資格があるから選ばれる」
というような言葉を耳にすることがあります。
確かに、専門資格や知識は重要ですよね。
管理栄養士や医師、理学療法士、トレーナーなどの肩書があれば、
「安心できそう」「きちんとしていそう」と感じてもらいやすいのも事実でしょう。
しかし、それ“だけ”で選ばれているのでしょうか。
多くの現場に触れる中で感じるのは、エンドユーザーが評価しているのは
肩書きそのものではないということです。
エンドユーザーは“専門性そのもの”を評価していない?
専門用語を多く使えることや、論文やデータを提示できること、
理論を体系的に説明できることは、確かに専門性の一部です。
ただし、エンドユーザーがそれらの妥当性を厳密に比較しているかというと、必ずしもそうではありません。
なぜなら、栄養やトレーニング理論の正確性を一般の方が
細かく判断することは、現実的には難しいからです。
実際に見られているのは、もう少し別の部分にあると感じています。
例えば、
・説明が分かりやすいか
・話に一貫性があるか
・提案に納得感があるか ・・・など等
つまり、専門性が“伝わる形”になっているかどうかです。
専門性は、伝わって初めて、意味を持つものではないでしょうか。
エンドユーザーが感じ取っているのは“構造”と“自信”
エンドユーザーが重視しているのは、妥当性そのものとは少し違う部分です。
説明が途中でぶれないかどうか、判断基準が明確かどうか、
根拠と提案がつながっているかどうかといった点は、無意識のうちに感じ取っています。
これは知識量の問題ではなく、設計の問題です。
支援の流れが整理され、どの情報をどう解釈し、どのような判断基準で提案しているのか。
その“構造の一貫性”があるとき、エンドユーザーは安心感を抱きやすくなります。
それは、知識の多さとは別のところで生まれる信頼なのかもしれません。
ここに、専門性と信頼の違いがあると考えています。
「専門性」と「選ばれる理由」の違い
整理すると、次のような違いがあります。
|
観点 |
専門性 |
選ばれる理由 |
|
中心 |
知識・資格・理論 | 設計された体験 |
|
エンドユーザーの評価軸 |
内容の難しさ | 分かりやすさ・一貫性 |
| 伝わり方 |
説明量が多い |
判断基準が明確 |
| 安心感のもと | 肩書き |
構造の整合性 |
専門性はもちろん重要です。
ただし、それがそのまま選ばれる理由につながるとは限りません。
選ばれるかどうかは、知識の量だけでなく、設計された体験に一貫性が
あるかどうかも影響しているのではないでしょうか。
情報は“使える状態”になって初めて価値になる
ヘルスケアの現場では、体組成情報や生活習慣のヒアリング、食事記録など、
さまざまなデータが活用されています。
近年では、体質傾向を把握するための遺伝子検査データなども選択肢の一つとして存在します。
しかし、情報が増えるほど価値が高まるとは限りません。
解釈の軸がなければ、情報は活用されないまま残ってしまいます。
・どの情報を重視するのか
・どのような基準で優先順位をつけるのか
・提案にどう落とし込むのか
この設計が十分に整理されていなければ、情報量が増えるほど説明は複雑になりがちです。
データや体質情報も同様で、解釈の軸がなければ、
単なる数値として扱われてしまうことも少なくありません。
再現性のある説明ができるかどうか。誰が担当しても判断軸が共有されているかどうか。
そうした点が整っているかどうかが、エンドユーザーの理解や納得感にも
少なからず影響してくるように感じます。
その積み重ねが、専門性を事業としての信頼へとつなげていくのではないでしょうか。
信頼は、肩書きではなく設計から生まれる
専門性を磨くことは、これからも大切であることに変わりはありません。
ただ、エンドユーザーが感じている信頼の正体は、肩書きそのものとは
少し違うところにあるのかもしれません。
説明が整理され、判断基準が共有され、提案に一貫性があること。
その積み重ねが、「ここなら任せられる」という感覚につながっていくように感じます。
専門家だから選ばれる、というよりも、専門性が設計された形で
伝わっているかどうかが影響しているのではないでしょうか。
これからのヘルスケア事業においては、知識を示すこと以上に、
その知識をどのように設計し、どのように届けるかという視点が、
より重要になっていくのかもしれません。
今日のIDENSIL情報局は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。
株式会社グリスタは個別化ヘルスケアに特化した遺伝子分析サービス「IDENSIL(イデンシル)」の開発メーカーです。
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IDENSIL管理栄養士 根岸
IDENSIL(株式会社グリスタ)に所属している管理栄養士の根岸です。 遺伝子活用と栄養に関する情報をお伝えしていきます。 ※IDENSILは、健康な方を対象に遺伝的傾向を把握するためのヘルスケアツールであり、医療的な診断・治療を目的とするものではありません。本コラムでも医療用の遺伝子検査ではなく、ヘルスケア分野での利活用に限定して紹介しています。



