#92 遺伝子検査による個別化は、本当に差別化になるのか?― ヘルスケア事業者が考えるべき“設計”という視点
【この記事の3行まとめ】
・遺伝子による個別化とは、生まれ持った体質という“前提”から設計するという発想
・遺伝子検査を導入するだけでは差別化にはならない
・差別化になるかどうかは、検査の有無ではなく“どう設計するか”にかかっている
皆さんこんにちは。
株式会社グリスタ 管理栄養士の根岸です。
今回は、「遺伝子による個別化と差別化」をテーマにお送りします。
先日、健康博覧会に出展しました。その展示会で、何度もいただいた質問があります。
「遺伝子で個別化とは、具体的にどういうことですか?」
「それって本当に差別化になりますか?」
“遺伝子検査”という言葉は印象が強い分、実際に何が変わるのかが
見えにくい部分もあるかもしれません。
今回はその点を、少し整理してみたいと思います。
同じことをしても、同じ結果にならない理由
同じトレーニングをしても、
同じ食事をしても、
同じ睡眠時間を確保しても、
成果の出方は人によって異なります。
これはヘルスケアの現場にいる方であれば、日々実感していることではないでしょうか。
筋肉がつきやすい人もいれば、そうでない人もいる。
体脂肪が落ちやすい人もいれば、落ちにくいと感じる人もいる。
こうした違いは、努力の差だけでは説明しきれません。
その背景の一つにあるのが、生まれ持った体質の違いです。
遺伝子での“個別化”とは何を指すのか
遺伝子検査で分かるのは、「今の状態」ではありません。
体重や血液データのような“現在の結果”ではなく、その人がもともと持っている体質傾向です。
例えば、
・筋線維のタイプに関わる傾向
・代謝酵素の働きに関わる傾向
・睡眠やストレスに関わる傾向
といった、「生まれ持った土台」の部分です。
従来のヘルスケア指導は、現在の体組成や生活習慣をもとに設計されることが一般的だと思います。
そこに生まれ持った体質という視点が加わることで、「なぜこの方法を選ぶのか」という説明に、
より一貫性が生まれます。
例えばトレーニングにおいても、同じプログラムでも成果の出方は人によって異なります。
その違いを結果論で片づけるのではなく、生まれ持った体質という前提から考えるという事が、
“体質を踏まえた個別化”という発想です。
個別化とは、メニューを細かく分けることではなく、その人の“前提条件”を踏まえて
設計することだと考えています。
それは差別化になるのか?
ヘルスケア事業者にとって、差別化は永遠のテーマですよね。
価格でも設備でもなく、「ここでなければならない理由」をどうつくるか、
日々考えられていると思います。
その問いに対する一つのヒントとして、遺伝子検査による個別化が語られることが増えてきました。
ここが本題です。
遺伝子検査を導入すれば、それだけで差別化になるのでしょうか。
正直に言えば、導入するだけでは差別化にはならないと考えています。
検査結果を「情報」として渡すだけであれば、それは付加価値の一つにとどまります。
そして、違いが生まれるのは、
・その情報をどう読み解くか
・既存の指導ノウハウとどう結びつけるか
・継続支援の中でどう活かすか
ここまで設計できたときです。
エンドユーザーにとっての価値は、「遺伝子を調べたこと」ではなく、
“自分に合わせて考えられている”と実感できることにあると考えています。
差別化の正体は「体験」にある
価格や設備、立地といった分かりやすい違いではなく、
・説明の納得感
・設計の一貫性
・長期的な視点での伴走
こうした積み重ねが、「ここで続けたい」と感じる理由になっていくのではないでしょうか。
遺伝子情報は、そのための材料の一つです。
しかし、材料があるだけでは料理にはなりません。
大切なのは、その人の前提に目を向けながら、どのようなプロセスを設計するかということ。
差別化は、いかに個人に合わせたサービス体験を丁寧に組み立てられているかという点に、
少しずつ表れてくるものなのかもしれません。
まとめ
遺伝子による個別化とは、今の状態を見るだけでなく、生まれ持った体質という
“変わらない軸”を踏まえて設計すること。
それは、指導の質や納得感を高める可能性を持っています。
ただし、差別化を生むのは遺伝子そのものではなく、それをどう活かすかという設計思想です。
展示会でいただいた問いへの答えは、「遺伝子が特別なのか」ではなく、
“どこまで本気で個別化と向き合うか”が差を生むということなのかもしれません。
今日のIDENSIL情報局は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。
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IDENSIL管理栄養士 根岸
IDENSIL(株式会社グリスタ)に所属している管理栄養士の根岸です。 遺伝子活用と栄養に関する情報をお伝えしていきます。 ※IDENSILは、健康な方を対象に遺伝的傾向を把握するためのヘルスケアツールであり、医療的な診断・治療を目的とするものではありません。本コラムでも医療用の遺伝子検査ではなく、ヘルスケア分野での利活用に限定して紹介しています。



