#85 体質×食の考え方-行動変容につなげる栄養・食事アドバイスとは
【この記事の3行まとめ】
・パーソナライズド栄養市場は世界的に拡大し、一律の食事指導からの転換が進んでいる
・栄養の正しさだけでは行動は変わらず、「自分ごと化」された説明設計が重要になる
・体質情報は、食事内容を決めるためではなく、行動変容を支える“納得材料”として活用できる
皆さんこんにちは。
株式会社グリスタ 管理栄養士の根岸です。
今回は、「体質情報を活かした“行動につながる栄養・食事アドバイスの考え方”」をテーマにお送りします。
栄養指導や食事アドバイスは、ヘルスケア領域において非常に重要な役割を担っています。
「体は食べたものでできている」
「食事が健康の土台になる」
こうした考え方自体は、多くの人に理解してもらえると思います。
それでも現場では、
「大事だと伝えているのに、なかなか行動が変わらない」
「説明したときは納得してくれるが、続かない」
といった悩みをお持ちではないでしょうか。
私自身、病院の管理栄養士として勤務していた時も、栄養指導の場では理解を示してくれても、
実生活では伝えたことが活かされていない、なんてことも珍しくありませんでした。
その時は、知識が不足しているのか?分かりやすく説明できていないのか?ととても悩みました。
しかし、今振り返ってみると、栄養の知識そのものが不足しているケースは、
実はそれほど多くないと考えています。
課題になりやすいのは、“正しい内容をどう伝えるか”という部分なのではないでしょうか。
パーソナライズド栄養が注目される背景
近年、栄養分野では「パーソナライズド栄養(Personalized Nutrition)」という考え方が
世界的に広がっています。
市場調査では、パーソナライズド栄養市場は今後も拡大が見込まれており、画一的な食事提案から、
個人の体質やライフスタイルを踏まえたアプローチへと流れが変わりつつあります。
この背景には、
- ・健康意識の高まり
- ・一律の食事法では成果や納得感を得にくくなっていること
- ・遺伝子解析やデータ活用技術の進展
といった要因があります。
特に注目すべきなのは、「何を食べればいいか」よりも、
「なぜ自分にはそれが必要なのかを知りたい」というニーズが強まっている点です。
栄養の話が“自分ごと”にならない理由
一般的な栄養指導や食事アドバイスでは、
- ・バランスの良い食事
- ・摂取量や頻度の目安
- ・控えた方がよい食品
といった、“誰にとっても正しい一般論”が中心になりがちです。
もちろん、これらは栄養学的に重要な視点です。
しかし、聞き手にとっては「それが自分にどう関係しているのか」
が見えにくく、行動につながりにくいことがあります。
自分に置き換えてみるとわかりやすいですが、ただ情報を理解しただけでは行動に移しませんよね。
行動が変わるのは、その情報が自分の体感や経験と結びついたときだと思います。
知識中心の説明と、体質×心理を踏まえた説明の違い
栄養指導や食事アドバイスの現場では、「同じ内容を伝えているのに反応が違う」
という場面が少なくありません。
その違いは、説明の設計にあると考えています。
|
観点 |
知識中心の栄養指導 | 体質×心理を踏まえた説明 |
|
説明の主語 |
一般論(多くの人) | 個別性(あなたの場合) |
|
納得の根拠 |
正しさ・エビデンス | 体感・経験とのつながり |
| 行動の動機 | 将来の健康 |
今の不調や違和感 |
| 指導後の反応 | 理解はする |
腑に落ちやすい |
| 継続しやすさ | 個人差が大きい |
比較的安定しやすい |
比べてみると、差がわかりますよね。
もちろん、一概にどちらが良い悪いというわけではありません。
ケースバイケースで使い分ける必要も出てくるでしょう。
ただ、行動変容という観点では、「自分ごととして理解できるかどうか」が大きな分かれ目になります。
体質情報を「自分ごと」に変える具体的な伝え方
ここで、体質情報を栄養指導にどう活かすかを、少し具体的に見てみましょう。
例えば、遺伝子情報からは、体質的に酸化の影響を受けやすい傾向かどうかがわかります。
酸化ストレスは、筋量の低下や肌の老化、血管の変化などと関連が指摘される要因の一つとされています。
ただ、こうした一般的な説明だけでは、「そうなんですね」で終わってしまうことも少なくありません。
一方で、それが「自分の体質の話」になった瞬間、受け止め方は大きく変わります。
たとえば、「体質的に酸化の影響を受けやすい傾向がありそうですね。
さらに、今の生活を見てみると、忙しさから食事が不規則になりやすく、
体に負担がかかりやすい状態が続いているかもしれません。
まずは、こういった食材を意識して取り入れてみるところから始めてみましょう。」
このように、体質傾向 × 現在の生活 × 食事の選択を一本の線でつなげて説明することで、
栄養の話は一気に「自分のこと」として受け取られやすくなります。
ここでは、食事内容を断定する必要はありません。
なぜその選択肢が勧められるのかが理解できれば、本人が自ら行動を選びやすくなります。
体質情報は「答え」ではなく「納得の補助線」
遺伝子検査などから得られる体質情報は、「この食事が正解」「これを守るべき」と
決めつけるためのものではありません。
むしろ、
・なぜ同じ食事でも体感に差が出やすいのか
・なぜ続けにくさを感じるのか
といった背景を説明するための材料だと考えています。
体質情報は、栄養アドバイスを守るべきルールから、納得して選べる行動へと変えるための補助線と
捉えることが重要です。
まとめ
栄養や食事の正しさと、行動変容は必ずしも直結しません。
行動を支えるためには、知識に加えて「自分ごととして理解できる理由」が必要です。
体質情報は万能な答えではありませんが、人が動き出すための納得感をつくる材料になります。
遺伝子情報を含めた体質理解を適切に活用することで、食事アドバイスは、
より現実的で続きやすいものになっていくのではないでしょうか。
今日のIDENSIL情報局は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
株式会社グリスタは個別化ヘルスケアに特化した遺伝子分析サービス「IDENSIL(イデンシル)」の開発メーカーです。
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IDENSIL管理栄養士 根岸
IDENSIL(株式会社グリスタ)に所属している管理栄養士の根岸です。 遺伝子活用と栄養に関する情報をお伝えしていきます。 ※IDENSILは、健康な方を対象に遺伝的傾向を把握するためのヘルスケアツールであり、医療的な診断・治療を目的とするものではありません。本コラムでも医療用の遺伝子検査ではなく、ヘルスケア分野での利活用に限定して紹介しています。



