#82 遺伝子検査で物販は本当に伸びる?-ヘルスケア事業者が知るべき活用の真実と注意点
皆さんこんにちは。
株式会社グリスタ 管理栄養士の根岸です。
今回は、「遺伝子検査と物販」をテーマにお送りします。
「サプリや食品、化粧品をもっと提案できたらいいのに」
日々、エンドユーザーの健康支援に携わるヘルスケア事業者さんであれば、
一度はそんなことを考えたことがあるかもしれません。
良い製品をエンドユーザーに届けたい。
それが結果として売上につながるのであれば、事業としても大切な視点ですよね。
そうした中で、「遺伝子検査」と特定の商品をセットで訴求するように見える
DTC(Direct to Consumer)遺伝子検査サービスも存在しています。
「あなたの遺伝子タイプにはこれ」「検査結果から最適な商品を提案」といった、
分かりやすい表現は、物販との相性が良さそうに感じられるかもしれません。
では実際のところ、遺伝子検査は本当に“商品が自然と売れる魔法のツール”なのでしょうか。
そこには、知っておくべき前提と、見落とされがちな誤解があります。
流行としての遺伝子検査と、常識としての遺伝子情報活用
先日の投稿で、ヘルスケア領域において「遺伝子」という言葉は一気に身近になり、
常識になりつつあるとお伝えしました。
一方で、その活用が流行の文脈だけで語られてしまうケースも少なくないと感じています。
遺伝子検査で分かるのは、あくまで体質や傾向に関する一部の情報です。
ヘルスケアの専門家が日々の選択肢を整理するための“ヒント”にはなりますが、
それだけですべてが決まるわけではありません。
もし遺伝子情報だけで最適な商品や行動が確定するのであれば、管理栄養士やトレーナー、
治療家といった専門家の定義は薄れてしまうでしょう。
実際には、生活環境、嗜好、目的、継続性など、遺伝子以外の要素もとても重要です。
遺伝子情報の活用が「常識」になりつつある今だからこそ、過度な期待と現実の線引きが重要になります。
「遺伝子検査×物販」で起こりがちな誤解と注意点
遺伝子検査と物販を短絡的につなげてしまうと、いくつかのリスクが生じる可能性があります。
よく見られるのが、「この遺伝子タイプだから、この商品が必要」といった一対一の結びつけです。
特定の商品を“遺伝子のお墨付き”のように扱う表現は、根拠が過度に単純化されて
受け取られてしまう可能性があり、結果として景品表示法や薬機法、場合によっては
医師法との関係で、表現や提案方法に注意が必要になるケースも考えられます。
また、エンドユーザーの背景を十分に考慮せずに提案を行うと、
「言われた通りに使ったけれど、合わなかった」「結局、続かなかった」といった
不満につながりやすくなる可能性もあります。
エンドユーザーにとって重要なのは、“遺伝子に合っているかどうか”以前に、
今の自分の状況に合っているかという視点です。
ここを無視した提案は、結果として信頼を損ねてしまう可能性もありますよね。
専門家が介在するからこそ、遺伝子情報は「活きる」
ここまで読むと、遺伝子検査と物販に対して否定的な印象を持たれたかもしれません。
しかし、物販そのものを否定しているわけではありません。
重要なのは、その使い方です。
管理栄養士やトレーナー、治療家といった専門家が介在することで、
遺伝子情報は初めて意味のある文脈を持ちます。
検査結果をもとに、「なぜこの選択肢が考えられるのか」「他にどんな方法があるのか」
といった選択肢の整理が可能になります。
例えば、管理栄養士の栄養カウンセリングを例にして考えてみましょう。
カウンセリングの際、目的や現在の生活状況のヒアリング、体組成データに加えて
遺伝子検査の情報を参考にしたとします。
このプロセスを経た上で、エンドユーザーにとってより良い選択肢を提供するために、
必要に応じて商品を紹介するのであれば、それは支援の一環になりますよね。
結果として、顧客理解が深まり、継続的な関係構築や他社との差別化に繋がっていく
可能性もあるのではないでしょうか。
エンドユーザーにとっても、ヘルスケア事業者にとっても「良い形」とは
エンドユーザーにとって本当に価値があるのは、「商品そのもの」ではなく、
「自分が望む未来を叶えるための方法」です。
ヘルスケア事業者にとっても、自分のサービスが役に立ち、喜ばれる形で
価値を提供できるほうが、結果的に良い関係を築ける可能性が上がりますよね。
遺伝子情報を顧客理解を深めるための共通言語として活用し、その延長線上に必要な提案がある。
この順序こそが、エンドユーザーと事業者の双方にとって健全な形と言えるのではないかと考えています。
遺伝子情報は「正しく使えば、確かに役に立つ」
遺伝子検査は、魔法のツールではありません。
だからこそ、専門性と倫理観を持ったヘルスケア事業者が関わる意味があります。
物販を捗らせるための手段としてではなく、一人ひとりに合った選択を支えるための情報として
遺伝子をどう活かすのか。
その視点を持つことが、これからのヘルスケアに求められているのではないでしょうか。
今日のIDENSIL情報局は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
株式会社グリスタは個別化ヘルスケアに特化した遺伝子分析サービス「IDENSIL(イデンシル)」の開発メーカーです。
お問い合わせはお気軽にどうぞ!
IDENSIL管理栄養士 根岸
IDENSIL(株式会社グリスタ)に所属している管理栄養士の根岸です。 遺伝子活用と栄養に関する情報をお伝えしていきます。 ※IDENSILは、健康な方を対象に遺伝的傾向を把握するためのヘルスケアツールであり、医療的な診断・治療を目的とするものではありません。本コラムでも医療用の遺伝子検査ではなく、ヘルスケア分野での利活用に限定して紹介しています。



