#65 遺伝子結果は世界均一ではない?民族・地域ごとの傾向と検査解釈
皆さんこんにちは。
今回は「遺伝子検査と人種の観点」をテーマにお伝えします。
ヘルスケア分野において遺伝子検査の注目度は年々高まっていますが、その研究の多くは欧米を中心に進められてきました。そのため、「どの集団を対象にして検証されたか」によって、結果の意味合いが異なるケースもあります。
遺伝的多様性と人種・民族による違い、ヘルスケア実装上の考慮点についてご紹介していきます。
遺伝子の傾向は「人類共通」ではない
人の遺伝子は99.9%以上が共通しているといわれていますが、残りのわずかな違いが、体質や代謝傾向などに影響を及ぼします。そして、このわずかな違いは「地域的・民族的な傾向」も考慮して考えることが必要です。
たとえば、筋肉のタイプに関する遺伝子には、アジア系とヨーロッパ系で分布に違いがあることが知られています。ある国・地域で研究された遺伝子検査が、別の地域の集団にそのまま適用できるとは限らない。つまり、検査の信頼性や活用方法を考える際には、「どの国や地域人々をベースに研究されたのか」に注意を払う必要があるのです。
国際的に広がる「多様なデータ」の重要性
近年、欧米諸国では、特定の人種や民族に偏らないゲノムデータベースの構築が進められています。たとえば、アメリカでは、様々な背景を持つ100万人以上の国民からデータを集めるプロジェクトが推進で、このプロジェクトの大きな特徴は、「人種・民族の多様性を意識的に確保している」ことです。
ヨーロッパのとある国でも、民族的多様性のあるデータ解析を重視する方針が示されています。これにより、より多くの人にとって意味のある遺伝子解析結果の提供が可能になると期待されていますし、日本でも、アジア固有のデータ整備の動きが始まっており、民族や地域に配慮したヘルスケア支援の実現が少しずつ進んでいます。
日本国内の事業者にとってのヒントとは
ヘルスケアサービスを日本国内で展開する上では、日本人の傾向に合わせた遺伝子検査を選ぶことが、利用者にとっての納得感や信頼性を高める鍵になります。特に、体質傾向や生活習慣改善をサポートする目的での導入を検討されている場合、検査項目の開発背景や参照データの民族性に着目することは、非常に重要だと考えています。
一方で、外国籍の顧客が多い場合や海外展開を視野に入れる事業者にとっては、人種的な遺伝的差異を理解した上で、より汎用性の高い検査プログラムを選定することが課題となるかもしれません。
いずれにせよ、遺伝子検査を導入する際には、科学的根拠だけでなく、「誰に向けて」「どのような意図で」活用するのかを明確にすることで、より価値あるサービス設計が可能になります。
遺伝子検査の導入を検討される際は、こうした点も重要な評価軸として意識してみてくださいね。
今日のIDENSIL情報局は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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