#21 「痩せる遺伝子」は存在する?遺伝子検査をダイエットに活かす方法
皆さんこんにちは。
今回も「遺伝子検査×ダイエット」をテーマにお伝えします。
近年、「痩せる遺伝子」や「太りやすい遺伝子」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思いますが、本当に「痩せる遺伝子」は存在するのか、また、市販のDTC(Direct to Consumer)遺伝子検査キットと専門家が活用する遺伝子情報にはどのような違いがあるのかをお伝えしていきます。
遺伝子とダイエットの関係について正しく理解し、遺伝子検査を効果的に活用する方法を是非覚えてくださいね。
「痩せる遺伝子」は存在するのか?
結論から言えば、「痩せる遺伝子」と単純に(ここがポイント)呼べるものは存在しません。
確かに、遺伝子の違いによって脂質代謝や糖代謝の傾向が異なり、体重の増減に影響を与える可能性があります。しかし、遺伝子の影響はあくまで一因であり、食事や運動、生活習慣などの環境要因が大きく関与します。
例えば、過食に影響を及ぼすとされている遺伝子は存在しており、特定のバリアントを持つ人は食欲が増しやすい傾向があります。
しかし、この遺伝子を持っているからといって必ず太るわけではなく、適切な食事と運動習慣によって十分にコントロールが可能です。
つまり、遺伝子検査は「体質の傾向を知る」ためのものであり、それだけで痩せる・太るが決まるわけではないのです。
DTC遺伝子検査キットの問題点
近年、市販のDTC遺伝子検査キットが手軽に購入できるようになり、簡単な唾液採取で遺伝的体質を調べられるサービスが増えています。しかし、これらのキットにはいくつかの問題点があります。
1. 科学的根拠の限界:多くのDTCキットは、特定の遺伝子の一部のみを分析し、単純な分類で体質を決定づけてしまいます。
しかし、遺伝子と体質の関係は複雑であり、単一の遺伝子情報だけでダイエットの成功を予測するのは難しいのが現実です。
2. 個別指導の欠如:DTCキットでは、遺伝子の結果が通知されるだけで、その結果をどのように活用すればよいのかの具体的な指導はほとんどありません。
そのため、利用者が誤った解釈をし、適切なダイエット方法を見つけられないこともあります。
3. データの信頼性:検査機関によって分析精度や解釈の基準が異なるため、同じ人が異なるDTCキットを使用すると異なる結果が出る場合があります。
これは、遺伝子検査の信頼性を損なう要因の一つです。
専門家が活用する遺伝子情報の違い
一方で、管理栄養士やトレーナーなどの専門家が活用する遺伝子検査は、DTCキットとは異なります。
専門家向けの遺伝子検査は、科学的根拠に基づき、より包括的な解析を行うことが特徴です。
1. 総合的な健康データと組み合わせる: 遺伝子情報だけでなく、食生活や運動習慣、生活環境などのデータを組み合わせて分析することで、よりパーソナライズされた指導が可能になります。
2. 専門家による適切な解釈と指導: 専門家は、遺伝子の結果を単に伝えるのではなく、それを基にした実践的な食事・運動プランを提案します。例えば、コレステロールバランスを取るのが苦手な体質の人には、適切な脂質の摂取バランスを考慮した食事指導が行われます。
3. 長期的なフォローアップが可能: 遺伝子情報を活用したダイエットは、一度の結果だけで終わるものではありません。
専門家とともに継続的にデータを管理し、ライフスタイルの変化に応じた最適なアプローチを模索できます。
遺伝子検査を正しく活用するには?
遺伝子検査をダイエットに活かすためには、次の点に注意することが重要です。
• 単なる体質診断に終わらせない:遺伝子情報を知ることは大切ですが、それを活かすためには具体的な行動が必要です。
• 専門家が情報を活用する:科学的に信頼できる遺伝子検査を選び、専門家と一緒に適切なダイエットプランを立てることが効果的です。
• 生活習慣を総合的に見直す:遺伝子だけでなく、食事、運動、睡眠などの生活習慣も重要な要素です。総合的なアプローチで健康的な体作りを目指しましょう。
まとめ
「痩せる遺伝子」という単純な概念は存在せず、遺伝子はダイエットの一要素に過ぎません。
DTC遺伝子検査キットは手軽ですが、科学的根拠や個別指導の面で課題があります。
一方で、専門家が活用する遺伝子情報は、個別最適化されたヘルスケアを可能にし、より効果的なダイエットをサポートします。
遺伝子検査を活用する際は、専門家の指導を受けながら、科学的根拠に基づいたアプローチを取り入れ、長期的な健康管理に役立てていきましょう。
今日のIDENSIL情報局は以上です。
最後までお読み頂きありがとうございました。

株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利
1979年生まれ/和歌山県出身/工学修士学生時代は竜巻のメカニズムを研究。2010年バレーボール個人指導スクール設立をきっかけに、個人の体質によるパフォーマンス影響に着目。2015年より遺伝子業界へ。2018年、日本で初めて専門事業者の指導やヘルスケアソリューションを個別化することに特化した業務用遺伝子分析サービス「IDENSIL」を開発・リリース。内閣官房が進めるレジリエンスジャパン推進協議会のWG委員選出や自治体との連携、日本を代表するトップアスリートの指導者への遺伝子情報提供を通じ、ヘルスケアから美容まで幅広い個別化に携わっている。