株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利

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#20.1 遺伝子検査×ダイエットは「痩せ方を決めるもの」ではない~専門家が活用する本当の意味(前編)~

皆さんこんにちは。

先日公開いたしました、イデンシル情報局の「#18 遺伝子検査ダイエットはもう古い?!遺伝子検査はどう活用するのが正解??」について、もう少し詳しく教えて欲しい!との声を頂きましたので、先日アップしたばかりですが、今回も「遺伝子検査×ダイエット」をテーマにお伝えします。
長くなりましたので、前編・後編の2回に分けてお送りいたしますが、どうぞお付き合いください。

 

「遺伝子検査を受ければ、自分に合った痩せ方がわかる」のか???

ダイエットに関する情報があふれる現代、「遺伝子検査を受ければ、自分に合った痩せ方がわかる」と思っている人は少なくありません。しかし、この考え方には大きな誤解があります。遺伝子情報はあくまで体質を知るためのツールであり、「この方法で痩せるべき」と決めるものではありません。

では、なぜ遺伝子情報をダイエットに活用することが重要なのか? そして、どのように専門家が遺伝子検査を活用し、個別最適化されたヘルスケアを提供しているのか?その本質に迫っていきたいと思います。

 


1. 遺伝子情報は「ダイエット方法を決めるもの」ではない理由

まず前提として理解すべきことは、遺伝子情報だけでは「この食事法が最適」「この運動をすべき」といった具体的なダイエット方法を決定できないということです。
なぜなら、ダイエットの成功には以下のような複数の要因が関与しているからです。

• 食習慣(摂取カロリー・栄養バランス)
• 運動習慣(有酸素運動・筋力トレーニング)
• 睡眠やストレス管理
• ホルモンバランスや年齢
• 腸内環境・代謝の状態
• ライフスタイルや活動量

これらの要素は、遺伝子だけで決まるものではなく、後天的な影響によって大きく変化することがわかっています。そのため、「遺伝子検査を受けたからといって、それだけで自分に合うダイエット法が決まる」と考えるのは誤りなのです。

 

2. 遺伝子検査でわかることとは?

では、遺伝子情報はダイエットにおいてどのように活用できるのでしょうか?
遺伝子検査を通じて得られる情報の一例として、以下のような体質に関する傾向があります。

• 体脂肪影響(脂肪燃焼ホルモンの働き、脂肪細胞分化影響、脂質代謝など)
• 血糖コントロール影響(インスリン生成・感受性影響など)
• 筋肉の成長しやすさ(速筋・遅筋のバランス)
• 酸化ストレス耐性(活性酸素への影響)
• 睡眠の質やストレス耐性

これらの情報をもとに、「自分の体質がどんな傾向があるのか?」を把握することは可能です。しかし、それをどのようにダイエットに活かすかは、個人の生活習慣や専門家の判断に委ねられます。

例えば、脂肪の代謝が苦手なタイプだからといって、「脂質制限ダイエットが最適」というわけではありません。むしろ、専門家がこれを参考にしつつ、総合的なアプローチを考えることが重要になります。

 

3. 専門家による「遺伝子情報の活用」がダイエット成功のカギ

遺伝子検査を適切に活用するには、管理栄養士やトレーナーなどの専門家の知見が不可欠です。
例えば、以下のような形で専門家が遺伝子情報を活用することができます。

1. 管理栄養士による食事指導の最適化

遺伝子情報を参考にしながら、個々の代謝や栄養吸収の特徴を踏まえた食事指導を行う。

2. トレーナーによる運動プログラムのカスタマイズ

筋肉の成長のスピードや持久力の傾向を考慮し、最適なトレーニング方法を提案する。

3. ライフスタイルの総合的な見直し

ストレス耐性や睡眠の質などを考慮し、無理なく続けられる健康習慣を提案する。
このように、**遺伝子情報は「ダイエット方法を決めるもの」ではなく、「個々の体質を理解し、最適なアプローチを導き出すための参考情報」**として活用されるべきなのです。

 

4. 「DTC遺伝子検査」と「専門家が活用する業務用遺伝子分析」の違い

近年、市販のDTC(Direct-to-Consumer)遺伝子検査キットが増え、「簡単に遺伝子検査ができる」と宣伝されることが多くなりました。しかし、DTC遺伝子検査は科学的根拠が乏しいものが多く、ダイエット指導に活かすには不十分なことが指摘されています。
一方、業務用遺伝子分析(例:IDENSIL)は、エビデンスに基づいた解析を行い、専門家が指導の材料として活用できる形に提供されるため、信頼性が大きく異なります。

参照:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dtc/index.html


 

前編のまとめ:「遺伝子検査×ダイエット」を正しく理解しよう

「遺伝子検査を受ければ、あなたに合ったダイエット方法がわかる」という広告文句は、科学的に正しいとは言えません。遺伝子情報は、あくまで体質を知るための一つのツールであり、それだけでダイエット方法を決定するものではありません。

ダイエットを成功させるためには、
✔ 遺伝子情報を正しく活用する
✔ 生活習慣や食事・運動習慣と組み合わせる
✔ 管理栄養士やトレーナーなどの専門家と連携する
こうした総合的なアプローチが必要です。

 

株式会社グリスタでは、専門家が活用できる業務用遺伝子分析を提供し、科学的根拠に基づいた次世代型ヘルスケアの実現を目指しています。
遺伝子情報を正しく理解し、専門家とともにより効果的なダイエットへとつなげていきましょう。

 

今日のIDENSIL情報局は以上です。

最後までお読み頂きありがとうございました。

後編もお楽しみに!

株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利

株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利

1979年生まれ/和歌山県出身/工学修士学生時代は竜巻のメカニズムを研究。2010年バレーボール個人指導スクール設立をきっかけに、個人の体質によるパフォーマンス影響に着目。2015年より遺伝子業界へ。2018年、日本で初めて専門事業者の指導やヘルスケアソリューションを個別化することに特化した業務用遺伝子分析サービス「IDENSIL」を開発・リリース。内閣官房が進めるレジリエンスジャパン推進協議会のWG委員選出や自治体との連携、日本を代表するトップアスリートの指導者への遺伝子情報提供を通じ、ヘルスケアから美容まで幅広い個別化に携わっている。

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