株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利

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#8 ヘルスケア関心層の市場ニーズに関する調査結果をもとに、業界の課題を徹底解説!

皆さんこんにちは、株式会社グリスタの斎藤です。

健康やスポーツ、美容などのヘルスケア業界・事業者にとってのお客様は、当然「ヘルスケアに興味関心がある人」です。興味関心があるから自ら情報を取りに行きますし、自分に投資もするのでヘルスケアが事業として成り立っています。

 

 日本はヘルスリテラシーが低い、フィットネスクラブなどの利用率が低い、だから保険や介護費の問題が解決しない、という課題が長年言われていますが、一方でヘルスケア興味関心層が日本のヘルスケア業界を支えていることも間違いありません。

経済産業省の調査でも「ヘルスケア市場は拡大していく」ことが予測されていて、2020年には24兆円市場規模だったものが、2050年には77兆円まで拡大していくと言われています。

 

ヘルスケア市場が拡大していく中で、ニーズがどうなっているのかを知っておくことは事業者としてとても重要なことです。 今回は当社が行ったヘルスケア興味関心層へのアンケート調査の結果を元に、彼らが何を求めていて、何に困っているのかをお伝えしたいと思います。 

 

この記事では詳細な数字は省略し、ポイントのみをお伝えします。調査結果は当社のプレスリリースにて公開していますので、ご興味ある方は以下をご覧ください。

 

 

ヘルスケアに興味関心がある層の意見を集約すると、以下の点が明確に分かってきました。

 

 

A:自分に合わせてカスタマイズされたメニューを組んでほしい

B:実績や数より科学的根拠に則った指導を受けたい

C:トレーニングや食事はちゃんとした専門家に指導されたい

D:でもその機会がない

 

 

【A:自分に合わせてカスタマイズされたメニューを組んでほしい】

この結果は当然のニーズだと感じますし、だからこそフィットネスクラブがある中で、パーソナルジムが普及してきたことに納得できます。

 

 

【B:実績や数より科学的根拠に則った指導を受けたい】

体組成計が普及してきたことを思うと、これもまた納得感があります。

体組成計が開発される前は、指導者の体感や経験がメインで、客観的な(科学的な)指標といえば体重計による体重くらいでした。

体組成計が開発されてからは、体脂肪率などの客観的かつ、科学的な指標が徐々に浸透してきました。私が一消費者であった当初は、「体組成」や「体脂肪率」は何の事を言っているかも分からず、専門指導を行う人が参考にする指標だと認識していました。今となっては一般の人でも広く普及しています。

 

A・Bから分かる事は、「科学的根拠を元に、自分にとって最適化されたサービスを受けたい」というニーズにつながることが分かります。

 

また意外だったのは、そのサービス提供者(事業者)が大手であることや実績豊富であることより、科学的根拠に則って最適化されたプログラムであることの方がより重要視されている、という点です。

ヘルスケア関連サービスは、IT大手企業が参入してきてもうまくいかずに撤退することも目立つ業界ですが、その一端が垣間見えた結果だと思います。

 

 

【C:トレーニングや食事はちゃんとした専門家に指導されたい】

この結果から、健康や美容は自分自身の事なので投資対象として「専門家の指導」は分かりやすいものなのだという事が分かります。

画一的な情報などではなく、自分自身に必要なものを専門指導してもらいたいというのは、A・Bにも繋がる結果として分かりやすいものでした。

 

 

【D:でもその機会がない】

日本の現状を映し出していると感じる結果になりました。

あるヘルスリテラシー調査では、日本はベトナムやミャンマー、インドネシアなどのアジア諸国に比べてもかなり平均点が低かったという結果が出ています。

欧米諸国と比べても、段違いにヘルスリテラシーが低いという調査結果だったそうです。

要は、リテラシーが低いので専門家を探す・見つけることも困難なのかもしれません。

 

パーソナルジムの店舗ウェブサイトなどを見てみると、店舗独自のメソッドや店舗数、あるいはトレーナーとしてのボディメイクコンテスト受賞歴や資格などの実績が訴求されているのが目立ちます。

(そうでない店舗は、立地や金額、設備、コストパフォーマンスなどが訴求されているのが目立ちます)

 

Cを見てみると、ヘルスケア事業者がいくら規模や自社のメソッド、実績を打ち出していても、ユーザーにはあまり響いていないどころか、Bまで考慮するとその訴求点がユーザーニーズとずれていることも分かります。

ユーザーからすると、メソッドや資格、受賞実績などを伝えられても「良し悪し」や「すごさ」が分かりません。

それがDの結果にも繋がってきているのだと思います。ユーザーの判断材料はあくまでも、「自分に合った指導をしてもらえるか」にあるのです。

 

 

余談ですが、私が以前バレーボール個人指導スクールを経営していたとき、似たようなやり取りを会員様と交わしたことをよく覚えています。

私はバレーボール個人指導専門の指導者でしたが、プロはおろか、部活でも全国大会すら経験したことがない選手でした。

しかしお試し指導からの入会率は95~98%を推移し、北海道から九州まで、実に全国から私の個人指導を受けに来ていただいていました。会員様に「なぜ元プロ選手でもない私から指導を受けたいと思うのか?」と聞いたところ「プロ選手だろうが何だろうが、私を上手くしてくれないと意味がない」と即答されたことがありました。

 

トレーニングや食事、美容なども同じことが言えるので、ヘルスケアに興味関心があるにもかかわらず専門サービスを受けたことがない人が多いのは、ニーズと訴求がマッチしていないことが要因のひとつにありそうです。

 それがマッチしてくると、ヘルスケア業界が拡大していくことにつながるはずですね。

 

そして遺伝子検査が次世代ヘルスケアとして重要視されているのは、そこに理由があります。

 科学的根拠に則った個別・最適化のニーズが存在し、遺伝子検査を活用するとそれが「体質情報」として個人差を把握した指導に生かされることで実現できると言われています。

 

事実、遺伝子検査を活用した個別化ヘルスケアは広がりを見せ始めています。

ヘルスケア業界の拡大、ひいてはヘルスケア事業者にとって個別化ヘルスケアを安心して取り組める環境を整備していくためにも、適切な遺伝子情報提供や運用体制づくりが欠かせません。

 

ヘルスケア事業者の皆様も、経産省や医師会が注意喚起しているように、間違った遺伝子検査による体質情報などを参考にしないよう注意してもらうとともに、適切な個別化ヘルスケアが広まるように当社も尽力したいと思います。

株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利

株式会社グリスタ 代表取締役 斎藤 利

1979年生まれ/和歌山県出身/工学修士学生時代は竜巻のメカニズムを研究。2010年バレーボール個人指導スクール設立をきっかけに、個人の体質によるパフォーマンス影響に着目。2015年より遺伝子業界へ。2018年、日本で初めて専門事業者の指導やヘルスケアソリューションを個別化することに特化した業務用遺伝子分析サービス「IDENSIL」を開発・リリース。内閣官房が進めるレジリエンスジャパン推進協議会のWG委員選出や自治体との連携、日本を代表するトップアスリートの指導者への遺伝子情報提供を通じ、ヘルスケアから美容まで幅広い個別化に携わっている。

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